一級建築士設計製図試験のスパン割り|2025年本試験で7m×6mを選んだ理由

2025年の本試験では、最初から7m×6mに決めていたわけではありません。
7m×7mや8m×7mも検討したうえで、敷地と要求室の両方を見ながらスパンを決めました。
この記事では、私が本試験でどのようにスパンを決めたのかを振り返ります。
これは2025年の本試験の私のエスキス用紙です。

一級建築士設計製図試験で、意外と悩むのがスパン割りです。
- 6mにするのか、7mにするのか
- 6mスパンは長辺方向か短辺方向か
- 均等スパンか、複合スパンか
エスキスを始めるとき、とりあえず敷地にグリッドを描いてから考えている方も多いかもしれません。
しかし、最初からスパンを固定してしまうと、そのグリッドに要求室を押し込むことになります。
私がスパンを考えるとき、最初に見ていたのは敷地だけではありません。
まず、要求室に50㎡程度の室が多いのか、40㎡程度の室が多いのかを確認していました。
そのうえで候補となるスパンを考え、敷地の間口や奥行きに当てはめます。
とはいえ2025年では「40㎡以上」・「50㎡以上」・「60㎡以上」・「150㎡以上」・「200㎡以上」など、さまざまな面積の要求室がありました。
簡単にスパン割を決められる課題ではありませんでした。
この記事では、2025年の本試験で実際に行った検討をもとに、私なりのスパン割りの考え方を紹介します。
そもそもスパンとは
スパンとは、柱と柱の間隔です。
例えば、7m×6mのグリッドで計画すると、柱に囲まれた一区画は42㎡になります。
一級建築士設計製図試験では、このグリッドを組み合わせながら、建物全体を計画していきます。
ただし、スパンは単なる構造上の寸法ではありません。
要求室、廊下、階段、EV、吹抜けなどを、建物の中にどのように納めるかを考えるための基準にもなります。
そのため、私は「いつも7m×7m」と決めるのではなく、要求室の面積構成を見てからスパンを考えていました。
最初に見るのは要求室の面積構成

私がスパンを考えるときは、まず要求室の面積を確認します。
50㎡程度の室が多ければ、
7m×7m=49㎡
が候補になります。
40㎡程度の室が多ければ、
7m×6m=42㎡
が使いやすくなります。
もちろん、要求室の面積と1コマの面積を完全に一致させる必要はありません。
ただ、どの程度の面積の室が多いかを見ることで、建物を組み立てやすいスパンをある程度想像できます。
その後、敷地の間口と奥行きを確認します。
7m×6mを使うとしても、間口方向を7mにするのか、6mにするのかによって、建物の形は変わります。
要求室の面積構成からスパンの候補を考え、敷地条件からスパンの向きを決める。
これが、私がスパンを考えるときの基本でした。
2025年本試験では7m×7mが使いにくかった
2025年の本試験では、次のような要求室がありました。
- サーバー室:40㎡以上
- 防災備蓄倉庫:50㎡以上
- 受水槽室:60㎡以上
- 大会議室:150㎡以上
- 議場:200㎡以上
- 事務室:700㎡以上
この面積を見たとき、7m×7mでは少し計画しにくいと感じました。
7m×7mは、1コマ49㎡です。
そのため、
- 1コマ:49㎡
- 3コマ:147㎡
- 4コマ:196㎡
となります。
- 50㎡以上に対して49㎡
- 150㎡以上に対して147㎡
- 200㎡以上に対して196㎡
どれも、必要な面積にわずかに届きません。

もちろん、間仕切りを少しずらせば対応できます。
ただ、今回の要求室に対して7m×7mを使うと、どの室も少しずつ調整しなければならないことが気になりました。
そこで私は、8mスパンの採用も考えました。
8m×7mスパンも検討した
8m×7mなら、1コマは56㎡です。
このスパンであれば、
- 50㎡以上:1コマで56㎡
- 150㎡以上:3コマで168㎡
- 200㎡以上:4コマで224㎡
となります。
要求面積だけを見ると、7m×7mよりも相性が良さそうです。
しかし、スパン割りは1コマの面積だけでは決められません。
2025年の建築可能範囲は、42m×26mでした。
間口方向を8m、奥行き方向を7mにすると、
- 間口:8m×5スパン=40m
- 奥行き:7m×3スパン=21m
となり、確保できるのは15コマです。
反対に、間口方向を7m、奥行き方向を8mにすると、
- 間口:7m×6スパン=42m
- 奥行き:8m×3スパン=24m
となり、18コマを確保できます。
どちらの向きにしても、奥行き方向は3スパンです。
今回の庁舎には、大きな要求室だけでなく、多くの小部屋、廊下、階段、EV、便所などを納める必要がありました。
要求室単体の面積だけを見れば、8m×7mは使いやすそうです。しかし、奥行きが3スパンでは、部屋数に対して計画の自由度が少ないと判断しました。
私は、間口6スパン×奥行き4スパンで建物を組み立てたいと考えていたため、8mスパンは採用しませんでした。
最終的に7m×6mを選んだ

最終的に選んだのが、7m×6mです。
建築可能範囲42m×26mに対して、
- 間口方向:7m×6スパン=42m
- 奥行き方向:6m×4スパン=24m
としました。
これなら、
6スパン×4スパン=24コマ
を確保できます。
8m×7mでは15〜18コマだったのに対し、7m×6mでは24コマを確保できます。
要求室を振り分けるためのコマ数に余裕があり、部屋数の多い庁舎を組み立てやすいと考えました。
また、1フロアの面積は、
42m×24m=1,008㎡
です。
3層で計画すれば、必要な延べ面積も確保しやすくなります。
7m×6mを選んだのは、「いつも使っているスパンだから」ではありません。
建築可能範囲の中で、必要な床面積とコマ数の両方を確保しやすかったからです。
廊下係数から無理なく納まるかを確認した

建物のボリュームを考えるとき、私は廊下係数を使っていました。
今回の建物は、1フロア1,008㎡です。
これを廊下係数1.4で割ると、
1,008㎡÷1.4=720㎡
となります。
これは、1フロアに約720㎡の要求室であれば、廊下、階段、EV、便所などを含めても無理なく計画できそうだという目安です。
2025年の本試験では、要求室を階ごとに振り分けると、おおよそ次の面積になりました。
- 1階:約420㎡
- 2階:約710㎡
- 3階:約520㎡
最も要求室面積の大きい2階でも、約710㎡です。
1フロアに納められる要求室面積の目安である約720㎡以内に収まります。
この計算からも、42m×24mの建物であれば、無理のない計画ができそうだと判断しました。
スパンを決めた後は、すぐに要求室を入れ始めるのではありません。
建物全体の床面積と、各階に配置する要求室面積の整合性を確認する。
この確認をしてから、具体的なプランニングへ進みました。
7m×6mで事務室700㎡以上をどう納めたか
2025年の本試験では、事務室を700㎡以上確保する必要がありました。
私は事務室を、1階と2階に分けて計画しました。
2階の事務室は、
42m×12m=504㎡
です。
間口方向は7m×6スパンの42m。
奥行き方向は6m×2スパンの12mです。
建物の長辺全体を使い、スパンに沿ってきれいに納めました。
1階の事務室は、間口を、
7m×3スパン=21m
としました。
奥行き方向には、
6m×2スパン=12m
を確保しています。
ただし、この中には2.5mの通路を設けました。
そのため、事務室として使える奥行きは、
12m-2.5m=9.5m
です。
したがって、1階事務室の面積は、
21m×9.5m=199.5㎡
となります。
2階と1階を合計すると、
504㎡+199.5㎡=703.5㎡
です。
これで、事務室700㎡以上という条件を満たしました。
大きな要求室は、まずスパンに沿ってまとまった範囲を確保する。
そのうえで、通路や間仕切りを調整し、必要な面積と動線を両立させました。
要求室の壁をすべて通り芯に合わせる必要はない

7m×6mを採用したからといって、すべての要求室を42㎡の倍数でつくったわけではありません。
大会議室は、
18m×9.5m=171㎡
としました。
防災備蓄倉庫は、
7m×9m=63㎡
です。
議場は、
19m×15m=285㎡
としました。
いずれも要求された面積を満たしていますが、7m×6mのグリッドをそのまま室の大きさにしたわけではありません。
大会議室は、整った長方形になるように間口と奥行きを調整しました。
防災備蓄倉庫は間口を7mスパンに合わせながら、奥行きを9mまで確保しています。
議場についても、7m×6mの基本スパンの中で必要な範囲を確保し、室内に現れる柱を抜いて無柱空間としました。
議場があるからといって、建物全体のスパンを議場だけに合わせたわけではありません。
建物全体は7m×6mで組み立て、要求室の壁は必要な面積や形に応じて調整する。
スパンは、要求室の面積を自動的に決める枠ではありません。
要求室を組み立てるための基準として使うものだと考えています。
大きな部屋と小さな部屋は分けて考える
私は、大きな要求室については、できるだけ整った形で納めるようにしていました。
大きな室は、柱や廊下との関係が悪いと、建物全体のプランに影響するからです。
一方で、小さな要求室については、多少融通を利かせます。
例えば7mスパンの中を、
3m+4m
に分ければ、小さな要求室を複数配置できます。
すべての要求室を1コマ単位で考える必要はありません。
- 大きな要求室は、まとまった形で確保する
- 小さな要求室は、間仕切り位置で調整する
- 廊下や通路を含めて必要面積を考える
このように、大きな室と小さな室でスパンの使い方を分けていました。
基本は単一スパンで考える
私は、同じ方向については、できるだけ単一スパンで考えていました。
2025年の本試験では、
- 間口方向は7m
- 奥行き方向は6m
で統一しています。
単一スパンを基本にしていた理由は、構造計画を分かりやすくするためだけではありません。
本試験中の作図ミスを減らすためです。
複合スパンにすると、通り芯を描くときや柱を描くときに、寸法を取り違える可能性があります。
壁まで描いてからスパン割りの間違いに気付けば、柱や壁を消して描き直さなければなりません。
限られた時間の中で、この修正は大きな時間ロスになります。
そのため、要求室が無理なく納まるのであれば、同じ方向はできるだけ単一スパンにしていました。
ただし、単一スパンは絶対的なルールではありません。
要求室の面積や敷地条件によって、途中でスパンを変えた方が納めやすい場合もあります。
そのような場合には、複合スパンを使うこともありました。
単一スパンにこだわって計画を苦しくするのではなく、まずは単一スパンで成立しないかを考える。
これが私の基本的な考え方です。
私がスパンを決めるときの順番
2025年の本試験で行った検討を整理すると、次のようになります。
STEP1 要求室の面積構成を見る
50㎡程度の室が多いのか、40㎡程度の室が多いのかを確認します。
STEP2 候補となるスパンを考える
7m×7m、7m×6m、場合によっては8mスパンも候補にします。
STEP3 敷地の間口と奥行きに当てはめる
それぞれのスパンで、何スパンずつ確保できるかを確認します。
STEP4 コマ数を見る
床面積だけでなく、部屋数に対して必要なコマ数を確保できるかを考えます。
STEP5 廊下係数から床面積を確認する
建物面積を廊下係数で割り、各階の要求室が無理なく納まるかを確認します。
STEP6 大きな要求室を検証する
事務室、議場、大会議室などが、無理のない形で納まるかを確認します。
STEP7 できるだけ単一スパンでまとめる
要求室が成立するのであれば、通り芯や柱の描き間違いを防ぐため、単一スパンを基本にします。
まとめ
スパン割りを考えるとき、最初から「6mにする」「7mにする」と決める必要はありません。
まず確認したいのは、要求室全体の面積構成です。
そのうえで、
- 要求室の面積と相性がよいか
- 敷地の間口と奥行きに納まるか
- 必要なコマ数を確保できるか
- 各階の要求室面積が無理なく納まるか
- 大きな要求室を整った形で確保できるか
- 作図時に間違いにくいスパンか
を確認します。
2025年の本試験では、7m×7mでは要求面積にわずかに届かず、8m×7mではコマ数が少なくなりました。
そこで私は、7m×6mを採用しました。
結果として、建築可能範囲42m×26mの中に、42m×24m、6スパン×4スパンの建物を計画できました。
事務室、大会議室、防災備蓄倉庫、議場についても、間仕切りを調整しながら必要な面積を確保しています。
スパンは、要求室を押し込むための枠ではありません。
要求室、敷地、床面積、コマ数をつなぎ、建物全体を組み立てるための基準です。
6mか7mかという数字だけで考えるのではなく、「なぜ今回の課題ではそのスパンなのか」を考える。
それが、スパン割りで迷いにくくなるために大切なことだと思います。
スパンが決まり、建物のおおよその大きさが見えてきたら、次は平面の骨格を考えます。
私がそこで意識していたのが、廊下をできるだけまっすぐ通すことでした。
部屋を先に並べて余った場所を廊下にするのではなく、先に廊下を通して、その両側に要求室を配置していきます。




