一級建築士設計製図試験の課題文の読み方|「条件」ではなく「建築」として読む

この記事は、私が本試験で実際に考えていたことを紹介する記事です。
「なぜこのような読み方をするようになったのか」については、こちらの記事で詳しく書いています。
私が設計製図試験に7回も不合格になった原因として一番大きいのは、ここにあるのだと気がつきました。
「課題文を、条件を確認するための文章としか考えていなかった」
- 条件違反をしないこと
- 要求室を確認すること
- 要求された面積を整理すること
もちろん、条件を読み落とさないことも大前提です。
私が本試験で読み落としを減らすために使っていた4色のマーキング方法については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
▶︎ 2025年本試験②一級建築士製図試験|私の4色マーキング術
そこばかりに意識が向き、建築そのものを考えられていませんでした。
しかし、8回目で合格した年は違いました。
課題文を読み始めるとき、私が考えていたのは条件ではありません。
「この課題では、どんな建築が求められているのだろうか。」
そんな視点で読むようになってから、課題文の見え方は大きく変わりました。
今回は令和7年の本試験課題を例に、私が実際にどのようなことを考えながら課題文を読んでいたのかを紹介します。
設計条件が過去10年間でどのように変化してきたのかは、こちらの記事で詳しく分析しています。
私は最初の一文で読むのを止めました
「住民に親しまれている公園に隣接した敷地に、
住民交流スペースを有する地方公共団体の庁舎を計画する。」

課題文の冒頭に書かれていた、この一文。
早々に私はここで一度読むのを止めました。
「これが今年の課題のメッセージか。」
もし単に敷地を説明したいだけなら、「公園に隣接した敷地」だけでも十分です。
それなのに、「住民に親しまれている」という表現まで付け加えられているところが、今年のポイントなのであろう。
実際の敷地はこのようになっています。

「公園とのつながりを意識した建築を提案してね。」という意図が込められているのだろうと、想像できます。
7回も痛い目を見てきたので、出題者が何を見ているのかを考える癖が付いていました。
これからイメージする、この時点での施設の概要はこんな感じになるのかなぁと想像します。

ただ、そう思い込み過ぎて、これまで落ち続けてきたのも事実です。
なのでこの時点で「住民交流スペースを公園側に配置しよう。」とは決めません。
まだ要求室を読んでいないからです。
「どこまで公園を意識させたい課題なのだろう。」
その温度感を探りながら、次へと読み進めていきます。
「土日祝日も利用可能」という一文から考える
さらに読み進めると、
「夜間・土日祝日も利用可能」
という条件が出てきます。
ここで最初に頭に浮かんだのは、
- セキュリティ
- 動線
- ゾーニング
という3つです。
「庁舎なのに休日も利用する」ということは、建物全体を開放するわけではなさそう。
では、
- 利用者はどこまで入れるのか。
- 職員エリアとはどう分けるのか。
- 入口は分けるのか。
- 住民交流スペースは独立利用できるのか。
そんなことを考え始めました。

今はまだ間取りではなく、建物の方向性を考えている段階です。
一つ一つ手を止めてじっくり考えていては、時間ばかりが過ぎていきます。

課題文を読むのと同時に、ぼんやりとでも考えていけるように、
資格学校の課題では、出題者の意図を読み取る練習をするのがオススメです。
敷地図から、角地の使い方を考える
課題文の冒頭から、私は「公園とのつながりを大切にした庁舎が求められているのではないか」と考えました。
次に敷地図を確認すると、敷地は公園に隣接するだけでなく、北東側が交差点に面した視認性のよい角地になっています。
課題文には、「角地を活かす」とは書かれていません。
それでも私は、
「実際の建築なら、角地という条件を計画にどう活かせるだろう」
と考えました。
そこで私が考えたのは、北東側に憩いの場を計画する事でした。

課題文に書いてある要求室「カフェ」について、
「自然災害が発生した際は、炊き出しなどに利用できる計画とする」
という条件がありました。
災害時の炊き出しに利用するのであれば、人が集まりやすく、外からも場所を認識しやすい方がよい。
そのため、視認性のよい北東側の角地と、カフェや憩いの場を結び付けて考えました。
このように、課題文の条件と敷地の特徴を一つずつ別々に見るのではなく、建築としてつなげて考えることを意識していました。
「公園だから開く」では終わらない
公園が目の前だからといって単純に「建物を公園側へ開こう。」とは考えたわけではありません。
先ほどもあったように、カフェは災害時の炊き出しにも使う場所です。
そう考えると人が集まりやすい場所が必要で、ただその一方で庁舎としてのセキュリティも確保しなければなりません。
特に、夜間や土日祝日にも住民交流スペースを利用するのであれば、住民が利用できる範囲と職員エリアを分けて考える必要があります。
つまり求められているのは、ただ開かれた庁舎ではなく、
「公園や地域住民に対して開きながら、庁舎として守るべき場所は閉じる」
「閉じつつ開く。開きつつ閉じる。」
私はそんな漠然としたイメージを持ちながら課題文を読み進めていました。


この時点では、まだ要求室の配置はほとんど決めていません。
でも、建物の性格は少しずつ見えてきています。
私が以前できていなかったのは、この段階でした。
昔の私は条件しか見えていませんでした
ランクⅢだった頃の私は、課題文を条件集として読んでいました。
- 条件に違反しない。
- 条件を漏らさない。
- 条件の室を確認する。
もちろん、それらは大前提です。
でも合格した年は、その条件を一つずつ処理するのではなく、「この条件を全部つなげると、どんな建築が求められているのだろう」と考えるようになりました。
実務ではおそらく考えていたであろうことでも、試験になると、条件を順守することだけのものと思い込んでいました。
課題文は「建築主からの要望書」として読むのが良い
8回目の設計製図試験でようやく合格できた私は、それまでとは決定的に違うことがありました。
それは課題文を読む視点です。
「もし自分がお金を出してこの建物を建てる建築主だったら、どんな提案をしてほしいだろう。」
そう考えると、
- 敷地の特徴
- 周辺環境
- 利用者
- 要求室
それぞれが一つの建築としてつながってきます。
もちろんこれが正解とは思っていません。
ですが、私はこの考え方に変わってから、課題文が「条件集」ではなく、リアルな設計依頼の場としての建築の要望書として読めるようになりました。


課題文が配られたタイミングは、クライアントからの受注の機会として考えると、まるで実務のようです。
もし今、課題文を読んでも条件しか見えていないと感じるなら、
「もし自分が建築主だったら、どんな建物を提案してほしいだろう。」
そう考えながら読んでみてください。
条件は守るものです。
でも、建築は考えるものです。
私はその違いに気づいてから、課題文を「条件集」ではなく「建築主からの要望書」として読めるようになりました。
これまでずっとランクⅢだった私が、合格できた年は、そのように課題文を読んでいました。
私の合格体験記はこちらの記事で詳しく紹介しています。

ここまでで、建築としての方向性は見えてきました。
次は、その方向性をもとに敷地図を読み取り、
建物をどこへ配置していくのかを考えます。





