一級建築士設計製図試験の課題文の読み方|「条件」ではなく「建築」として読む

この記事は「読み方の正解」を解説する記事ではありません。
私が合格した年、本試験で実際にどのようなことを考えていたのかを、そのままお伝えします。
私が設計製図試験に7回も不合格になった原因として一番大きいのは、ここにあるのだと気がつきました。
「課題文を、条件を確認するための文章としか考えていなかった」
- 条件違反をしないこと
- 要求室を確認すること
- 要求された面積を整理すること
そこばかりに意識が向き、建築そのものを考えられていませんでした。
しかし、8回目で合格した年は違いました。
課題文を読み始めるとき、私が考えていたのは条件ではありません。
「出題者は、どんな建築を望んでいるのだろうか。」
そんな視点で読むようになってから、課題文の見え方は大きく変わりました。
今回は令和7年の本試験課題を例に、私が実際にどのようなことを考えながら課題文を読んでいたのかを紹介します。
私は最初の一文で読むのを止めました

「住民に親しまれている公園に隣接した敷地に、
住民交流スペースを有する地方公共団体の庁舎を計画する。」
課題文の冒頭に書かれていた、この一文。
早々に私はここで一度読むのを止めました。
「これが今年の課題のメッセージか。」
もし単に敷地を説明したいだけなら、「公園に隣接した敷地」だけでも十分です。
それなのに、「住民に親しまれている」という表現まで付け加えられているところが、今年のポイントなのであろう。
実際の敷地はこのようになっています。

「公園とのつながりを意識した建築を提案してね。」という意図が込められているのだろうと。
7回も痛い目を見てきたので、出題者が何を見ているのかを考える癖が付いていました。
ただ、そう思い込み過ぎて、これまで落ち続けてきたのも事実です。
なのでこの時点で「住民交流スペースを公園側に配置しよう。」とは決めません。
まだ要求室を読んでいないからです。
「どこまで公園を意識させたい課題なのだろう。」
その温度感を探りながら、次の文章へ進みました。
6回連続でランクⅢだった私ですが、合格した年は敷地図の見え方が大きく変わりました。
その変化が合格につながる大きなきっかけだったと感じています。
こちらの記事も併せてご覧下さい。

「土日祝日も利用可能」という一文から考える
さらに読み進めると、
「夜間・土日祝日も利用可能」
という条件が出てきます。
ここで最初に頭に浮かんだのは、
- セキュリティ
- 動線
- ゾーニング
という3つです。
「庁舎なのに休日も利用する」ということは、建物全体を開放するわけではなさそう。
では、
- 利用者はどこまで入れるのか。
- 職員エリアとはどう分けるのか。
- 入口は分けるのか。
- 住民交流スペースは独立利用できるのか。
そんなことを考え始めました。
今はまだ間取りではなく、建物の方向性を考えている段階です。
敷地図から読み取るべきこと
敷地図を見て確認するのは、冒頭にあった「敷地と公園の位置関係」
そしてもう一つ重要な要素である「道路」です。
道路の付き方は、今後のエスキスを左右するのにとても重要です。
今回の課題は二面道路でした。
道路に挟まれた二面道路ではなく、「視認性の良い角地の二面道路」です。
道路付きを見て考えるのは「どちらがメインアプローチになるだろう。」ということ。
課題文には、「角地を活かしてください。」とは書かれていません。
だから試験として考えれば、気にしなくてもいいのかもしれません。
とはいえ私はこう考えていました。
「実際の建築なら角地という条件は必ず計画に活かそうと考えるだろう。」
「公園だから開く」では終わらない
公園が目の前だからといって単純に「建物を公園側へ開こう。」とは考えてはいけません。
課題文の要求室にあるカフェ。
「災害時に炊き出しなどに利用できる計画」と書かれています。

そう考えると人が集まりやすい場所も必要です。
その一方で、庁舎としての安全性も必要です。
つまり建物を、
「親しまれた公園に対して開くことも必要ですが、セキュリティを考えると閉じることも必要」と考えます。
「閉じつつ、開く」
そんなイメージを持ちながら読み進めていました。
昔の私は条件しか見えていませんでした
ランクⅢだった頃の私は、課題文を条件集として読んでいました。
- 条件に違反しない。
- 条件を漏らさない。
- 条件の室を確認する。
だから、建築そのものを考えるのではなく、建築として考えようという発想そのものがありませんでした。
実務ではおそらく考えていたであろうことでも、試験になると、条件を順守することだけのものと思い込んでいました。
課題文は「建築主からの要望書」として読むのが良い
8回目の設計製図試験でようやく合格できた私は、それまでとは決定的に違うことがありました。
それは課題文を読む視点です。
「もし自分がお金を出してこの建物を建てる建築主だったら、どんな提案をしてほしいだろう。」
そう考えると、
- 敷地の特徴
- 周辺環境
- 利用者
- 要求室
それぞれが一つの建築としてつながってきます。
もちろんこれが唯一の正解とは思っていません。
しかし、私はこの考え方に変わってから、課題文が「条件集」ではなく、建築の要望書として読めるようになりました。
もし今、課題文を読んでも条件しか見えていないと感じるなら、
「もし自分が建築主だったら、どんな建物を提案してほしいだろう。」
そう考えながら読んでみてください。
条件は守るものです。
でも、建築は考えるものです。
私はその違いに気づいてから、課題文を「条件集」ではなく「建築主からの要望書」として読めるようになりました。
これまでずっとランクⅢだった私が、合格できた年は、そのように課題文を読んでいました。
私の合格体験記はこちらの記事で詳しく紹介しています。


