部門によるゾーニング|部屋ではなく、建物を組み立てる考え方

エスキスでは、部屋を組み立てるのではなく、部門を組み立てることを意識します。
部門ごとのまとまりを先に決めることで、建物全体が組み立てやすくなります。
エスキスで、要求室を一つずつ配置していませんか?
私も以前は部屋を並べながらエスキスを進めていました。
しかし、それでは途中で配置が崩れ、何度も描き直すことがありました。
もちろん、要求室を確認しないという意味ではありません。
要求室表を確認する。ただし、すぐに一室ずつ配置しない。
まず「この要求室はどの部門に属するのか」という大きなまとまりで捉え、そのあとに部屋の配置を考えていきます。
部屋ではなく、まず部門を見る

課題文を読むと、
「事務室はどこに配置しよう。」
「会議室は隣がいいかな。」
と、一つひとつの要求室を考えたくなります。
私も以前は、要求室を一室ずつ配置しながらエスキスを進めていました。
しかし、そのやり方では途中で全体のバランスが崩れ、何度も描き直すことになります。

合格した年は違いました。
まず考えたのは、「この建物はどんな部門で構成されているのか。」ということです。
要求室は単独で存在しているわけではありません。
同じ役割を持つ部屋同士を一つのまとまりとして考えることで、建物全体の骨格が見えやすくなります。

私は要求室を見たら、まず4つの部門へ整理します。
課題文で明確に部門を記載していることが多いです。
例年の課題は4つ程度の部門に分けられる
2025年の本試験課題では、
- 議会部門
- 執行部門
- その他(共用)部門
- 管理部門
の4部門に分かれていました。
課題によって名称は変わりますが、例年の課題も、
- 課題固有の部門A
- 課題固有の部門B
- 共用部門
- 管理部門
という4つ程度の部門で構成されることが多いと感じています。

ただし、「4部門に分ければいい」という意味ではありません。
課題によって部門数や構成は変わります。大切なのは、要求室を一室ずつ見る前に、役割の近い部屋を大きなまとまりとして捉えることです。
この段階では、まだ「何階に配置するか。」までは考えません。
まずは建物がどのような部門で構成されているのかを整理することが目的です。

「共用」×「管理」×「課題固有の2部門」
という構成で整理すると全体像が見えやすくなります。
面積を見ると、階構成まで見えてくる
部門を整理したら、次に確認するのが各部門の面積です。
ここで初めて、
「この部門は何階に配置するのが自然か」
と考え始めます。
例えば3階建ての課題であれば、まず共用部門と管理部門を1階に配置した方が、利用者動線や管理者動線を整理しやすいケースが多くあります。
すると残る2階・3階には、課題固有のA部門とB部門を配置することになります。

この段階では、まだ細かな部屋のレイアウトは考えず、部門だけで建物全体を見ています。

例えば、外部から多くの人が利用する共用部門を1階に配置し、上階に課題固有の部門を配置するなど、部門の役割から階構成を考えていきます。
ただし、「共用部門は1階」と決めているわけではありません。
「なぜ、この部門をこの階にするのか。」
を課題条件から考えることが大切です。
面積によってゾーニングは変わる
ここで重要になるのが、部門ごとの面積のバランスです。
例えば、
A部門とB部門の面積がほぼ同じであれば、
- 2階=A部門
- 3階=B部門
というように、階ごとに部門を分ける計画が考えやすくなります。
どちらか一方の部門だけが明らかに大きい場合は、1フロアだけでは収まらないことがあります。
その場合は、最初から「この部門は2階と3階に分散しよう」という前提で階構成を考えます。

つまり、部門を整理してから面積を見ることで、部門の入れ替えや分散も自然に判断できるようになります。

部屋を配置しながら考えるのではなく、
部門単位で階構成を決めることが、エスキスを安定させるポイントです。
2025年本試験|「事務室700㎡以上」を見て考えたこと
2025年の課題で、一番印象に残っている要求室は事務室でした。
理由は、「700㎡以上」という大きな面積です。
設計製図試験の特性上になりますが、A1サイズの作図用紙に収めることを考えると、建物のボリュームは42m×28m程度が一つの目安になります。
そうなるとワンフロア1,176㎡。
廊下などを考慮して、廊下係数1.4で考えると部屋として計画できる有効面積は840㎡/階程度です。
1階には、
- エントランス
- カフェ
- 地域交流スペース
などを配置する必要がありますので、700㎡という数字を見た瞬間に私が最初に考えたのは、
「これは1フロアで収まるのか?2フロアに分散させるのか?」
ということでした。
このとき私は事務室単体で考えるのではなく、「この大きな執行部門を、建物全体の中でどう成立させよう?」と考えていました。
- 1フロアにまとめるのか。
- 2フロアに分散するのか。
- 関連する会議室などをどう組み合わせるのか。
700㎡という一つの要求室を見ながら、実際には建物全体の階構成を考えていたのです。

庁舎という用途を考えると、事務室は建物の中心になります。
会議室など、事務室と一緒に計画したい要求室もあるため、1フロアでは納まりきらない可能性が高そう。
実際にどのような割合で分けるのが良いのか、そこが合否を分けるポイントになりそうだと思いました。

まだこの時点では、部屋の位置は考えていません。
要求室の面積から、おおよその階構成を考える程度です。
2025年の本試験でのエスキス過程はこちらの記事で詳しく紹介しています。

部門が決まると、要求室を配置する「範囲」が決まる
部門ごとのゾーニングを行う一番のメリットは、要求室を「建物のどこに置こう?」と考えなくてよくなることです。
例えば会議室なら、建物全体の中から配置場所を探すのではなく、
「この会議室は執行部門だから、まずこのゾーンの中で考えよう。」
となります。
要求室を配置する範囲が絞られるため、一室ずつ建物全体を動かしながら考える必要がなくなります。
部屋を一つずつ配置すると、関連する部屋を後から何度も移動することになり、エスキスが崩れやすくなります。
一方で部門を先に決めれば、同じ部門の要求室は自然と近くに集まり、その結果、動線やゾーニングも考えやすく、計画全体がスムーズに進みます。

私がことごとく設計製図試験に落ち続けていた時は、「部門で考える」という意味を十分理解できていませんでした。
実際には部屋を一つずつ並べてしまい、全体がまとまらないことが何度もありました。
今は、
- まず部門を整理し、
- 面積を見て、
- 階構成を決めて、
- そのあとに要求室を配置する。
この順番に変えてから、エスキスは以前よりも安定するようになりました。

「管理部門はこのあたり。」
「利用者部門はこのあたり。」
「共用部門はここ。」
このくらい大まかな配置だけでも、建物全体の骨格が見えてきます。
時間に追われ、焦る気持ちもよく分かります。
ですが、この手順を端折っていきなり一部屋ずつレイアウトしていく方がかえって時間がかかってしまいます。
まずは骨格。要求室はそれからでも十分間に合います。
部門ごとの配置と階構成が見えてきたら、次に考えるのがスパン割りです。
私は最初から「7m×7m」と決めるのではなく、要求室の面積や敷地条件を見ながら、その課題に合うスパンを考えていました。

スパンが決まって建物の大きさが見えてきたら、次はその中に廊下を通し、要求室を配置していきます。
私が意識していたのは、廊下をできるだけまっすぐ通すことです。

まとめ

部門によるゾーニングは、要求室を配置するためではなく、建物全体の構成を決めるために行います。
私は課題文を読んだあと、
- 部門を整理する
- 面積を確認する
- 階構成を決める
- 要求室を配置する
この順番にすることで、部屋ではなく建物全体を見ながらエスキスを進められるようになりました。
まずは一つひとつの部屋ではなく、部門というまとまりから建物を組み立ててみてください。
私は長い間、エスキスとは「要求室をうまく配置する作業」だと思っていました。
でも、合格した年にやっていたのは少し違います。
- 部門を整理する。
- 面積を見る。
- 階構成を考える。
- 建物の骨格をつくる。
- そのあとに要求室を配置する。
部屋から建物をつくるのではなく、
建物をつくってから、その中に部屋を納める。
私にとって「部門によるゾーニング」は、そのための考え方でした。



