ランクⅢになる人の共通点|私が6回ランクⅢだったから分かった、本当の原因

過去の自分の設計製図試験を改めて振り返ってみると、ランクⅢを繰り返していた答案には、ある共通点があることに気がつきました。
「なぜランクⅢだったのか分からない。」
「要求室も入っているし、法規も大きく外していない。それなのになぜ?」
ランクⅢだった頃の私は、毎年そんなことを考えていました。
今振り返ると、原因は単純な知識不足ではなかったと思います。
私が繰り返していた最大の失敗。
それは、エスキスを進めるうちに「この課題は何を求めているのか」を見失っていたことです。
この記事では、6回ランクⅢだった私自身の失敗と、合格した2025年の答案を振り返りながら、
なぜランクⅢを繰り返してしまったのか。
そこから抜け出すために、何を変えたのか。
についてお話しします。
6回のランクⅢに共通していたこと
ランクⅢだった頃の私は、エスキスを始めた直後には、
「どんな建物が求められているのか。」
と考えていました。
ところが、エスキスが進むにつれて、
- 要求室
- 面積
- スパン
- 動線
- 法規
- 廊下
- 屋外施設
など、考えなければならないことが一気に増えてきます。
すると、いつの間にか頭の中が、
「どうすれば全部の要求室を納められるか。」
でいっぱいになっていました。
課題の施設を設計しているつもりなのに、途中から目的が「図面を完成させること」に変わってしまっていました。
これが私が長年ランクⅢであった原因だと思います。
課題文を読んでいた。それでも条件を見失った
「ランクⅢになるのは、課題文をちゃんと読んでいないからでしょ。」
と思われるかもしれません。
しっかり課題文を読んでいますし、設計条件も要求室も確認していました。
重要だと思うところには、アンダーラインも引いていました。
それでも、エスキスの途中で条件を見失っていました。
2017年本試験課題|「名峰・湖に向ける」を忘れた

2017年の宿泊施設の課題には、
「客室は名峰・湖に向けて計画する」
という重要な条件がありました。
私はしっかりとその条件を読んでいたにもかかわらず、客室をまったく違う方向へ配置してしまいました。

試験後に条件違反に気づいたときの絶望感は今でも覚えています。
なぜ、そんなことが起きたのか。
今なら分かります。
途中から、「客室をどう納めるか。」ばかりを考えていたからです。
本来考えなければならなかったのは、「名峰・湖を望める宿泊施設を、どうつくるか。」です。
似ているようで、まったく違います。
もし「名峰・湖に向ける」という要求を最後まで判断軸として持っていれば、1フロアに納まらなければ2フロアに分けるなど、別の方法を考えたはずです。
ところが当時の私は、課題文の要求より、自分が納めやすいプランを優先してしまいました。

2017年の本試験で実際にどんな失敗をしたのかは、別の記事で詳しく紹介しています。
私と同じ失敗をしないためにも、ぜひ参考にしてみてください。

「課題文は読んでいるのに読み違える」という失敗については、こちらの記事で詳しく書いています。

「部屋」を配置して「建物」を設計していなかった
資格学校では、ゾーニングや部門構成について何度も教わっていましたので、当然私も知識としては理解していました。
しかし、エスキスになると、
- 面積が足りない。
- スパンが合わない。
- この部屋をどこへ入れよう。
- ここに階段を入れたら、この部屋が入らない。
そんなことばかり考えていました。
建物全体を考えてから部屋を配置するのではなく、一室ずつ空いている場所へ入れていたようなイメージです。
これでは要求室は全部入っていても、建築としてはまとまりません。
今振り返ると、ランクⅢだった頃の答案には、
「なぜ、この部屋がここにあるのか。」
を説明できない配置がたくさんありました。

これは一つのチェックポイントになると思います。
自分のエスキスを見ながら、
「なぜ、この部屋はここなのか?」
と自分に聞いてみてください。

「ここしか入らなかったから。」
という答えが多ければ、少し注意が必要かもしれません。
答案例から「形」を覚えようとしていた
資格学校で解いた課題が無駄だったわけではありません。

私は7年間資格学校に通い、
- 部門配置
- 動線計画
- アプローチ
- ゾーニング
- 法規
など、多くのことを学びました。
しかし学び方を間違えていました。
ランクⅢだった頃の私は答案例を見ると、
「こういう課題なら、こういうプランにすればいいんだ。」
と、プランの形そのものを覚えようとしていました。

でも、本当に見るべきだったのは形ではありませんでした。
「なぜ、この計画になったのか。」です。
例えば、
- なぜこの部門を1階にしたのか。
- なぜこの場所をメインアプローチにしたのか。
- なぜこの部屋とこの部屋を近づけたのか。
- なぜこの方向へ開いたのか。
そこには必ず、課題文や敷地条件に対する理由があります。
資格学校の答案例から学ぶべきなのは、
「模範解答の形」ではなく「設計者が何を根拠に判断したのか」
だったのだと思います。
合格した2025年、最初に考えたことが変わった

2025年の本試験。
私がエスキス用紙の最初に書いた言葉は、冒頭の設計条件に書かれた以下の文言でした。
- 誰もが使いやすい
- 親しまれた公園
- セキュリティ
まず考えたのは、要求室をどこへ入れるかではなく「どんな庁舎を設計するか。」でした。
計画地に隣接した南側には公園があります。
それなら、公園とのつながりを生かして、地域住民が日常的に利用できる庁舎にできないか。
要求室をどう納めるかではなく、「この施設はどうあるべきか」を先に考えられるようになっていました。
公園側にエントランスを設け、その近くにカフェを配置する。
そうすることで、手続きのためだけに訪れるのではなく、地域住民が日常的に立ち寄れる庁舎にしようと考えました。

その後の部門配置や動線についても、
「この庁舎なら、どうあるべきか。」
という基準で考えられるようになりました。
- 公園側へエントランスを設ける。
- カフェを配置する。
- 地域住民が自然に立ち寄れる庁舎にする。
本試験中に初めて「実際の建築を設計している」と思えた瞬間
合格した年、一つ印象に残っている瞬間があります。
それまでの本試験では、エスキスがまとまったとき「よし、要求室がハマった」という感覚でした。
それが2025年の試験終了時は、初めて「建築として成立している。」と思えた瞬間がありました。

敷地図から建築を考える
2025年の本試験課題、敷地北東側は交差点がありました。
私は交差点付近の見通しにも配慮しながら、その場所を地域住民が気軽に利用できる憩いの場として計画しました。
また、課題文には災害時への配慮も求められていました。
そこで、災害時には地域住民が集まれる場所としても使えるよう考えました。

課題文に「北東側に憩いの場をつくりなさい。」と書いてあったわけではありません。
「交差点に配慮して広場を計画しなさい。」とも書いてありません。
でも私は、実際にこの土地に庁舎を設計するとしたら、きっとこう提案するだろう、と考えての計画でした。

実際の本試験ではこのように補足説明をしていました。

本試験中にも関わらず、そのとき初めて、
「実際の庁舎を設計している。」
そう思えたことを今でも覚えています。
それまでの7年間では、こんな感覚になったことは一度もありませんでした。
ランクⅢだった頃と合格した年で、私の知識が突然大きく増えたわけではありません。
変わったのは、エスキスを見る視点でした。
それまで「部屋」を見ていた私が、ようやく「建築」を見るようになったのです。
ランクⅢだった頃と、合格した年の違い
振り返ると、考える順番が大きく変わっていました。
この違いは、私にとって非常に大きなものでした。

確認するポイントも変わった
ランクⅢだった頃は、
- 要求室は全部あるか
- 面積は合っているか
- 法規は大丈夫か
ばかり確認していました。
もちろん、これらが必要なことは間違いありません。
ただそれだけでは足りませんでした。
合格した年は、それに加えて、
- 建物全体としてまとまっているか
- 建築主の要求に応えられているか
- 敷地の特徴を生かしているか
- 利用者にとって自然な建物になっているか
- 「なぜこの計画なのか」を説明できるか
を見るようになりました。
確認するものが「部屋」から「建築」へ変わった。
これが、私の中では大きな変化だったと思います。
では、実際に試験元はどのような点を評価しているのか。
2014年から2025年までの合格基準を並べてみると、試験制度が変わっても、求められている基本的な力には共通点がありました。

違和感があるまま作図へ進まなくなった

私は以前、「とにかく描き上げれば可能性はある。」を最優先に考えていました。
だからエスキスに違和感があっても、制限時間から逆算して「これ以上エスキスに時間を掛けられない」と、作図へ進んでいました。
しかし、そのエスキスの違和感は図面を描いても消えず、図面を描いては消して、を繰り返し修正しながら、余計に時間を失っていました。
描き直しては、別の部分との矛盾が出て、また直す。
そして作図が終わると、まとまっていないのに、やり切ったことによる「合格への切符を手に入れた感」が残ります。
そして結果は、またランクⅢ。

未完成なら不合格、描き上げたなら可能性は残る。
と思い、描きあげることを目標としていました。
ランクⅢを繰り返している人に試してほしいこと
ここまで読んで、「じゃあ具体的にどうすればいいの?」と思う人もいると思います。
私がおすすめしたいのは、エスキスの途中で一度手を止めて、次の3つを確認することです。
①この建築で一番大切な要求は何か
課題文に書かれている条件を、すべて同じ重さで考えるのではなく、
「この課題で絶対に外してはいけないことは何か。」
を考えます。
2017年の私なら、
「客室から名峰・湖を望めること」
でした。
②今の計画は、その要求に応えているか
要求室が全部入っているかを見る前に、
「そもそも、この建物は建築主が求めた建物になっているか。」
を確認します。
③「なぜ、この計画なのか」を説明できるか
例えば、
「なぜエントランスはここ?」
「なぜこの部門は1階?」
「なぜこの部屋はここ?」
「なぜこの方向へ開いている?」
それぞれに理由があるか確認します。
理由が、「ここしか入らなかったから。」ばかりになっていたら、一度建物全体を見直してみる。


この3つだけでも、エスキスを見る目はかなり変わると思います。
エスキスで自分に問いかけること
合格した年から、エスキスで迷ったときは、自分に一つの質問をするようになりました。
「この計画は、建築主の要望に応えられているだろうか。」
例えば2017年の宿泊施設課題なら、「客室をどうすれば名峰・湖へ向けられるか。」を意識します。
1フロアに納まらなければ、2フロアに分けることも検討するでしょう。
大切なのは自分が考えやすい計画ではありません。

建築主の要求をどう実現するか。
私は、この考え方を持てるようになって初めて、ランクⅢから抜け出すことができました。
まとめ|ランクⅢの原因は「ミス」だけではなかった
私は6回ランクⅢになりました。
7年間資格学校に通い、多くの知識を身につけました。
それでも合格できませんでした。
今振り返ると、私の場合、本当の問題は知識の量だけではありませんでした。
建築主より、自分の都合を優先してしまっていたこと。
これが大きかったと思います。
- 部屋をどう納めるか。
- 面積をどう合わせるか。
- 法規をどうクリアするか。
それらを考えているうちに、建築主が何を求めているのかを忘れていました。
その結果として、条件の見落としや、不自然なゾーニング、まとまりのない部屋配置といった問題が現れていたのだと思います。
しかし8回目の受験では、最後まで「建築主からの要求に応えること」を考え続けました。
すると、部門配置や動線、部屋の配置で迷ったときにも、「何を優先するべきか。」を以前より判断できるようになりました。

もし今、ランクⅢが続いているなら、一度だけ自分に問いかけてみてください。
「この計画は、建築主の要望に応えられているだろうか。」
要求室が全部入っているかを見る前に、
「自分は、どんな建築を設計しようとしているのか。」
を考えてみてください。
私にとっては、この問いがランクⅢを抜け出す大きな転機になりました。
設計製図試験対策そのものを見直したい方へ



