一級建築士製図試験|2014~2025年の合格基準から見えた「本当に求められる力」
| 期間 | 特徴 |
|---|---|
| 2014〜2018 | 評価される基本項目は現在と大きく変わらない |
| 2019〜2025 | 具体的な不適合内容が公表されるようになる |
| 2026年 | 法令集の持込みが可能になる |
試験の制度や公表される情報は変化しています。
しかし12年分を並べてみると、「建築士として何を評価するか」という根本部分は、驚くほど変わっていませんでした。

この記事では、2014年から2025年まで12年分の合格基準を比較し、「製図試験が何を評価しているのか」を分析します。
過去の試験を振り返ることが目的ではありません。今年の試験で合格するために、過去から何を学べるのかを一緒に考えていきます。
2014~2025年を分析して感じたこと
2014年から2025年まで12年分の合格基準を並べてみると、二つのことが見えてきました。
一つは、試験制度や不適合内容の示され方は変化していること。
もう一つは、建築士として評価される基本的な力はほとんど変わっていないこと。
私は、この「変わったもの」と「変わらなかったもの」の両方を見ることに、過去の合格基準を分析する意味があると思っています。
近年、ランクⅡが極端に少なくなっている
近年の製図試験では、「そこそこできている答案」がランクⅡに集まるというより、ランクⅠに届かなければランクⅢ・Ⅳまで評価が下がる傾向が数字として見えてきます。


私自身、本試験後に講師から「今年は期待できそう」と評価を受けたにも関わらず、ランクⅢだったことがあります。
振り返るとおそらく防火区画と防火窓の記載漏れによるものと思います。
12年分を並べてみて私が気になったのは、近年ランクⅡが非常に少なくなっていることでした。
2014年には32.7%だったランクⅡが、近年は数%程度です。
「もう少しで合格だった」という位置に答案が集まるのではなく、ランクⅠに届かなかった答案の多くがランクⅢ、あるいは重大な不適合によってランクⅣとなっています。
この数字を見ると、私は製図試験では「大きく外さないこと」の重要性が以前より見えやすくなっているように感じます。
2019年から「何が不適合だったのか」が見えるようになった
令和元年以降の合格基準では、「受験者の答案の解答状況」が公表されるようになりました。
そこには、
- 道路高さ制限
- 北側高さ制限
- 延焼ライン
- 防火区画
- 重複区間
- 要求室の床面積
こうして並べると、特別に難しい設計手法が指摘されているわけではありません。
階段、要求室、高さ制限、防火区画、延焼ライン。
どれも受験生なら一度は勉強している内容です。
それでも、本試験ではそこを外してしまう。
私自身もそうでした。
私は毎年、合格基準を活かせていなかった
不合格だった頃から毎年合格基準に目を通していました。
合格発表の日にはPDFを開き、
「今年は何が原因で落ちた人が多かったのか。」
「ランクⅠは何%だったのか。」
そんなことを確認していました。
特に気になっていたのは、「受験者の答案の解答状況」です。
- 要求室・施設等の特記事項の不適合
- 高さ制限への適合が確認できる情報の未記載
- 直通階段に至る重複区間の長さ
などが並んでいました。
でも、私はそれを見ても、「それは分かっているよ。」としか思っていませんでした。
要求室を落としてはいけないことも、法令違反が駄目なことも、受験生なら誰でも知っています。
だから私は、「何が書かれているか」は読んでいましたが、
「なぜ試験元は毎年同じことを伝え続けているのか。」
という視点では読めていませんでした。

防火区画が大切なことも、要求室を落としてはいけないことも知っていました。
でも、「知っていること」と「本試験の答案で確実に守れること」は別でした。
12年分を見て感じた「合格させたくても合格させられない答案」
12年分の合格基準を見て、「試験が難しくなった」というよりも、
「重大なミスをすると、合格させたくても合格させられない試験になったのではないか。」
と、私は感じています。
例えば、動線計画がとても良かったとしても、重大な法令違反がある。
周辺環境をうまく読み取った計画でも、重要な要求条件を満たしていない。
そんな答案を、一級建築士として合格させることができるでしょうか。
第一条(目的)
この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的とする。
生命・健康・財産を守る。
建築基準法そのものが、ここから始まっています。
そう考えると、製図試験で法令違反が重く扱われることは、単なる「試験上の減点ルール」ではありません。
建築士として最低限守らなければならないラインなのだと思います。
近年の合格基準では、法令違反や設計条件の不適合が具体的に公表されています。
私はこれを、単に「採点が厳しくなった」とは捉えていません。
一級建築士として、絶対に外してはいけないものがある。
12年分を読み比べて、試験元が繰り返し伝えているのは、このことではないかと感じました。
それでも、12年間変わらなかったものがある
採点のポイントを12年分見比べると、驚くほど変わっていない項目があります。
それが、
- 空間構成
- 建築計画
- 構造計画
- 設備計画
です。
構造計画ではその建物に合った構造を考えること、設備計画ではその用途に合った設備を計画すること。
課題がホテルでも図書館でも庁舎でも評価される内容は一貫しています。
課題は変わっても建築士として必要な力は変わらない。
12年分を分析してそう感じました。
2026年、法令集持込みで私ならこう考える
令和8年の本試験では、法令集の持込みが認められるようになりました。

試験が難しくなるってことなのかな?
と心配になる人も多いと思いますが、私はこの変更は受験生にとってプラスになると考えています。
試験本番では普段知っている内容でも緊張で思い出せなくなることがあります。
そんなとき法令集で確認できることは大きな安心材料になります。
私自身、2025年の本試験では記憶が曖昧なまま回答してしまい、ランクⅢを覚悟しました。

法令集の持込みが可能になったからといって、私は「細かな条文を本試験中に探し続ける試験」になるとは考えていません。
むしろ重要なのは、法令を知っているかではなく、必要なときに確認し、それを設計に反映できるか。
そこなのではないかと思います。
その反面、法令集で確認できる環境になった以上、基本的な法令違反については、これまで以上に厳しく見られる可能性もあるのかもしれません。

本試験中に法令集を最初から調べていたら時間が足りません。
基本事項は理解しておき、判断に迷ったところを確認する。
私なら、そのための道具として法令集を使う練習をします。
過去12年の合格基準から、今年やるべきこと
過去の合格基準を知るのはとても重要なことです。
理由は、課題を予想するためではありません。
試験が何を評価しようとしているのかを知るためです。
毎年課題は変わります。
しかし一級建築士として求められる力は変わりません。
だからこそ過去12年分の合格基準には、今年の試験にも通じるヒントが詰まっています。
採点者が見ているポイントを知ることは、自分がどこに力を注ぐべきかを知ることにもつながります。
本試験の過去問は「公共財団法人 建築技術教育普及センター」のホームページで確認できます。
こちらにリンクを貼っておきます。
▶︎ 公共財団法人 建築技術教育普及センター「過去の試験問題等」
まとめ

12年分の合格基準を並べてみると、試験には変わった部分と、変わらなかった部分がありました。
不適合内容の公表、法令集の持込みなど、試験を取り巻く環境は変化しています。
それでも、
- 法令を守る
- 要求条件に応える
- 安全で使いやすい建築を考える
- 構造・設備まで含めて建築を成立させる
という根本は変わっていません。
課題を当てる必要はありません。
ホテルでも、図書館でも、庁舎でも、
「一級建築士として、この条件から建築を成立させられるか。」
試験元が12年間問い続けているのは、結局そこなのではないかと私は感じました。
そして、この考え方は合格基準を読むときだけではありません。
課題文 → 敷地図 → 屋外施設 → 要求室 → ゾーニング……
と、私のエスキスの考え方そのものにつながっていきました。
ここからは、私が2025年の本試験で実際に行ったエスキスの手順を、順番にまとめています。
私が本試験で実際に行っていた考え方を、順番にまとめています。

私が合格した2025年の本試験では、この順番で考えることでエスキスがまとまりました。
1、課題文
▶︎ 課題文の読み方|「条件」ではなく「建築」として読む
2、敷地図
▶︎ 敷地図の読み取り方|「確認するだけ」の敷地図をやめて、合格に近づいた理由
3、屋外施設
▶︎ 要求条件の読み取り方|課題文・敷地図の次は「屋外施設」を考える
4、要求室
▶︎ 要求室の読み取り方|レイアウトより先に考えていたこと
5、部門・ゾーニング
▶︎ 部門によるゾーニング|部屋ではなく、建物を組み立てる考え方
6、スパン割り
▶ 一級建築士設計製図試験のスパン割り|2025年本試験で7m×6mを選んだ理由
7、廊下の計画
▶︎ 廊下をまっすぐ通す|まとまりのある平面になる考え方



