2025年本試験③一級建築士製図試験|本試験当日のエスキス手順を公開
「また来年か……」
合格発表を見るたびに、何度この言葉が頭をよぎったか分かりません。
悔しさ、情けなさ、自分への失望。
一級建築士製図試験は、努力した分だけ必ず報われる試験ではありません。
ほんの小さな条件違反や計画のズレによって、不合格になる厳しい試験です。
私自身、何度も不合格を経験しました。
それでも諦めきれずに挑戦を続け、8回目の受験でようやく合格することができました。
この記事では、そんな私が2025年本試験で実際に行ったエスキス手順について紹介します。
もちろん、エスキス方法に絶対的な正解はありません。
ですが、何度も失敗した経験から感じるのは、毎回同じ手順で考えることが合格への近道だということです。
今回は、
・課題文から何を読み取るか
・どの順番でエスキスを進めるか
・どこで判断するべきか
について、実際の本試験で考えていたことを交えながら解説していきます。
私のエスキスSTEP①|課題文から重要な情報を書き出す

エスキスを始める前に、まず課題文から重要な情報を整理します。
ただし、この時点で細かなプランを考える必要はありません。

マーキング方法の記事で紹介しましたが、青色が重要ポイントとしてマークしました。
私は、課題文を読みながら頭に残った重要ワードをエスキス用紙の端に書き出していました。

試験中はここにあまり時間が避けないので端折っていますが、青色でマーキングした重要なワードをまとめると以下になります。
- 住民に親しまれている公園に隣接した敷地
- 土日祝日も利用できる住民交流スペース
- 誰もが使いやすい施設計画
- 議場は3階、かつ無柱空間
- 書庫は事務室のある階
- 大会議室は3室以上に分割可能
- 守衛室は夜間、土日祝日に書類の預かり業務も
時間を掛けすぎると、その後のエスキスや作図時間が圧迫されます。

「これは絶対に計画に影響する」という条件だけを拾います。
私のエスキスSTEP②|スパン割を決める
敷地図を使いながら、最大建築可能面積を出します。

免震構造を採用したので、隣地境界線から3mずつセットバック、北側道路には車椅子用の駐車場を計画するのに3.5m+免震クリアランス2.5mで6m。
これにより、間口42m×奥行26mの建物が計画できることが分かります。
計画がしやすいように単一スパンで考えると、
- 間口7m×6スパン
- 奥行6m×4スパン
- 建築面積 42m×24m=1,008m2
これでおおよそのスパン割りができます。
私のエスキスSTEP③|廊下係数で建物の余裕を確認する
スパン割を終えると、階構成の検討に移ります。
その際、私は廊下係数を意識しています。
廊下係数とは、「建物全体面積 ÷ 要求室面積」で求める数値です。
一般的には1.4〜1.7程度が計画しやすいと言われています。
2025年本試験では、
- 建物面積:約3,024㎡
- 要求室面積:約1,950㎡
でした。
ここから計算すると、
3,024㎡ ÷ 1,950㎡=1.55
となります。
つまり、「要求室を入れても廊下や共用部分を確保できそう」という判断ができます。
この数字を意識すると、無理に部屋を詰め込んだり、逆に大きすぎる建物を計画することを防げます。
まずは各階の廊下係数を1.4として計算すると「720m2/階」で計画するのが良さそう、ということが分かります。
STEP1の写真内で、廊下係数をもとに1階あたりの面積を算出しているのが分かります。

1,008m2÷1.4=720m2
という計算になりますね。
私のエスキスSTEP④|要求室を部門ごとに整理する

次に、要求室を部門ごとに分けます。
2025年課題の場合は、
議会部門
・議場
・議員控室
・関連諸室
議会部門を合計すると400m2になりました。
執行部門
・事務室
・町長室
・副町長室
・会議室
・書庫
・サーバー室
執行部門を合計すると1,050m2になりました。
管理部門・その他
・住民交流スペース
・カフェ
・守衛室
・機械室など
管理部門・その他をまとめると500m2になりました。
このように、部門ごとに面積を算出しました。

先ほど廊下係数から「720m2/階」が計画しやすいということが分かっているので、
議会部門と執行部門は階を跨いで計画することになる。
ということが予想できます。
この段階で大切なのは、「階ごとのゾーニングができるのか、各部門が階を跨ぐのか」を考えることです。
私のエスキスSTEP⑤|階構成を決める

部門整理ができたら、次に階構成を考えます。
課題が発表されたら、その施設の一般的な構成や計画の考え方を知ることがとても重要です。
庁舎なので、一般的には、
3階:議会部門
2階:執行部門
1階:住民利用部門
という構成が自然です。
理由は、
・議場は静かな環境が必要
・議会部門は最上階に配置されることが多い
・住民交流スペースは公園との繋がりを考えて1階が望ましい
これらによって、階構成のイメージが掴めてきます。

例えば、新築住宅の依頼を受けたとき、施主が高齢者であれば、特別な理由がない限り3階建てを提案することは少ないでしょう。
それと同じように、庁舎には庁舎らしい、図書館には図書館らしい計画があります。
「この用途なら、一般的にはこういう構成になる。」
という基本形を知っているだけで、エスキスのスタートが格段に楽になります。
一級建築士製図試験では、奇抜なアイデアよりも「自然な計画」が重要です。
独創的な発想よりも、実例にあるような素直な計画の方が試験では強いと思います。
私のエスキスSTEP⑥|各階へ部門を振り分ける

次に具体的な階への振り分けを行います。
先ほどの廊下係数でお分かりいただけるように、2025年課題では執行部門の面積が大きく、1フロアに収まりませんでした。
そこで、
・2階:執行部門
・3階:町長室・副町長室の執行部門、及び議決部門
というように分散しました。
この時に大切なのは、「全部を1つの階に納めることを考えつつ固執しない」ことです。
要求面積が大きい場合、部門をまたぐ計画は十分あり得ます。

私は階毎のゾーニングに固執しすぎていた時期がありました。
廊下がガタガタになって、かえって計画にまとまりがなくなってしまいました。
今回は、各階ともに710m2に近づけるような形で階を振り分けると、バランスの整った平面形状になります。
ここまでできると、あとは実際に配置をしていくだけです。
私のエスキスSTEP⑦|マス目を利用して室配置する

最後に具体的な室配置を行います。
この段階では、綺麗な図面を書く必要はありません。
ひたすら「入るかどうか」を確認します。
私が意識していたポイントは、廊下を長手方向にまっすぐ通すことです。
2025年課題では東西方向に長い敷地だったため、東西方向に廊下→南北方向に室を配置という考え方で計画しました。
廊下を真っすぐ通すだけで、プランはかなり整って見えます。
製図試験では限られた時間でまとめる必要があります。
複雑な動線計画よりも、誰が見ても分かりやすい素直な計画を目指すことが重要です。
最初は1スパンを1コマとして小さく「こんな感じ」をイメージします。
イメージがしやすくなってきたタイミングで、2マス×2マスを「1スパン」として計画します。

製図試験界隈では、
「1コマ×1コマ」を「チビコマ」
「2コマ×2コマ」を「倍コマ」
と、表現します。
私のエスキスSTEP⑧|1/400スケールで詳細を確認


ここまでで、部門構成や室配置はほぼ決まっています。
最後に1/400スケールで建物全体を描き、計画に無理がないかを確認します。
この段階では、細かな寸法よりも、
- 室同士のつながりに違和感はないか
- 廊下幅や階段の位置は成立しているか
- 吹抜けや無柱空間など、重要な条件を満たしているか
- 作図に移ったときに迷う部分はないか
を確認していました。
1/400は「考えるための図面」というより、作図へ移るための最終チェックという位置付けです。
この段階で迷う部分が残っていると作図中にも迷ってしまいます。
逆に1/400で疑問点を解消できれば作図はほとんど写す作業になります。

1/400があれば、手が止まることなく作図ができるはずです。
エスキスは才能ではなく手順
一級建築士製図試験では、「どんな素晴らしいアイデアを出せるか」よりも、「条件を満たした建物を時間内につくれるか」が重要です。
私自身、8回受験する中で何度もエスキスで迷いました。
ですが、最終的には毎回同じ流れで考えることで、安定してまとめられるようになりました。
私のエスキス方法が正解というわけではありません。
ただ、
・課題文整理
・部門整理
・階構成決定
・面積確認
・室配置
という流れを固定することで、本番の迷いは確実に減ります。
これから製図試験を受験される方の、少しでも参考になれば幸いです。
