一級建築士設計製図試験|記述は作文ではない|エスキスとつながる記述の考え方

私は一級建築士設計製図試験を8回受験しましたが、最後まで記述が苦手でした。
覚えるのも面倒で、エスキスと作図の方が大事だと思っていたからです。
本試験を重ねる中で、記述は図面とは別に答えを考える問題ではないと気付きました。
「記述で何を書けばいいか分からない。」
「解答例を覚えても、どうせ本試験では使えない。」
設計製図試験を受けていた頃、私は記述にずっと苦手意識がありました。
資格学校の解答例を見ると、きれいに整理された文章が並んでいます。
でも当時の私には、それを覚えることに意味を感じられませんでした。

「覚えるのがめんどくさい。」
そんなことより、エスキスと作図の方が大事だと思って、記述は後回しにしていました。
課題が変われば、敷地も建物用途も、要求されることも変わります。
覚えた文章を、そのまま使える場面はほとんどありません。
本試験でも、「あの解答例では何と書いていたっけ」と思い出そうとして、出てこなくて焦ることがありました。
文章として覚えてしまうと、少しでも条件が変わったときに応用が利きません。
結局、資格学校で渡される記述例を、文章として覚えるだけでは、私にはあまり役に立たないと感じていました。
そして、記述をさらに後回しにしてしまっていたのです。
今振り返ると、記述を「答えを暗記して書く問題」だと考えていたこと自体が、間違いだったのだと思います。
記述は作文ではありません。
自分が計画した建築を説明する問題です。

2025年本試験の記述で問われたこと
2025年の本試験では、答案用紙Ⅱに「計画の要点等」を記入することが求められました。
問われたのは、大きく分けると次の3つです。
- 周辺環境、乳幼児連れ来庁者、セキュリティ、諸室の関係などの施設計画
- 省エネルギー、災害時の給電などの設備・防災計画
- 建築物の機能を維持する構造と、議場の無柱空間に関する構造計画
平面計画、設備、構造と、まったく別々のことを聞かれているように見えます。
実際、記述には設備や構造の知識も必要です。
ただ、難しい言葉をたくさん覚えておけば書ける問題ではありません。
課題文を読み、エスキスを進める中で決めたことが、そのまま記述の材料になります。
図面に描いたこと。
図面には描き切れないけれど、計画するときに考えたこと。
その二つを言葉でつなげることが、記述で求められているのだと思います。
私が2025年の本試験で、課題文を読んでから1/400までどのような順番でエスキスを進めたのかは、こちらの記事で詳しく紹介しています。

記述の型は「計画→理由→効果」

私が記述を書くときに考えていた順番は、次の通りです。
- 何を計画したか
- なぜ、その計画にしたか
- その結果、どのような利用や効果につながるか
例えば、2025年の本試験では、乳幼児連れ来庁者への配慮が問われました。
「乳幼児連れ来庁者に配慮して計画しました。」
これだけでは、何をしたのかがサッパリ分かりません。
私が本試験で考えたのは、エントランスホールの出入口に近接して、授乳室や幼児用トイレを配置することでした。
これを順番に整理すると、次のようになります。
- 計画:エントランスホールの出入口に近接して、授乳室や幼児用トイレを配置した
- 理由:乳幼児連れの来庁者が利用しやすいようにするため
- 効果:建物に入ってから長い距離を移動せず、必要な設備を利用できる
試験だから、ともっともらしい表現にする必要はありません。
エスキスで決めたことを、そのまま言葉にしただけです。
設備や構造の場合も同じです。

「何を採用したか」
「なぜ採用したか」
「その結果、何を実現したいのか」
この順番で考えれば、文章だけを丸暗記するよりも、ずっと課題に応用しやすくなります。
課題文を、建築主の要望として読む

以前の私は、課題文を条件の集まりとして読んでいました。
- 住民交流スペースが必要。
- 乳幼児連れ来庁者に配慮。
- 公園との関係に配慮。
一つひとつに印を付けて、条件違反をしないようにする。
それだけで終わっていたのです。
2025年は、課題文を「建築主がつくってほしい庁舎の要望書」として読むようにしました。
- 地域住民に親しまれた公園がある。
- 住民交流スペースを設ける。
- 夜間や土日祝日にも利用される。
- 災害時には、庁舎として機能を維持する。
こうして並べてみると、求められているのは単に部屋を納めた庁舎ではありません。
地域の人が使いやすく、災害時にも役割を果たせる庁舎です。
この建築主の要望を意識すると、エスキスで何を優先するべきかが見えてきます。
そして、計画の理由があるから、記述にも書けることが生まれます。
課題文を条件の確認で終わらせず、建築として読み取る考え方はこちらの記事で詳しく解説しています。

2025年本試験で、記述に使えた計画
親しまれている公園を、敷地の外の条件で終わらせない
課題では、地域住民に親しまれた公園との関係が求められていました。
公園がある。
住民交流スペースが必要である。
私は、この二つを別々の条件としては考えませんでした。
親しまれている公園と庁舎を一体的に利用できるようにし、地域住民が利用しやすい施設にしたいと考えました。
公園を単なる敷地の外にあるものとして見るのではなく、住民交流スペースの使われ方まで含めて、庁舎とどう関係づけるかを考えたのです。

公園側に住民が利用しやすい場をつくる。
その判断が平面図にあり、記述ではその理由と効果を説明する。
私はそのように考えました。
また、地域住民に親しまれた公園に面し、住民交流スペースを有する庁舎であることから、公園利用者も気軽に立ち寄りやすい施設だと考えました。
乳幼児連れ来庁者への配慮は、配置で答える

乳幼児連れの来庁者にとって、庁舎内を長く移動することは負担になります。
そこで私は、エントランスホールの出入口に近接して、授乳室や幼児用トイレを配置しました。
大切なのは、「乳幼児連れ来庁者に配慮した」と書くことではありません。
- どこに、何を配置したのか。
- なぜその位置にしたのか。
- それによって、誰が利用しやすくなるのか。
そこまで説明することで、図面とのつながりが生まれます。
700㎡の事務室から、町長室・副町長室の位置を考えた
私がエスキスで悩んだのは事務室700㎡という要求でした。
執行部門を2階のワンフロアだけで納めるのは厳しい。
では、上下階に分けるとしたら、何を分けるべきか。
そこで私は、町長室と副町長室は議会部門との関係が強いと考えました。
議会部門をまとめた3階に近接して配置したのは、ただ面積を納めるためではありません。
どの部門と関係が深いのか。
そのために、どこへ配置するべきか。
そこまで考えた結果です。
だから記述でも、「議会部門との関係性を考慮して3階に配置した」と書くことができます。
要求室を階に納めるだけでは、ここまでの説明はできません。
部門から建物を組み立てる考え方は、こちらの記事でも詳しく解説しています。

セキュリティゲートも、動線を考えた結果だった

庁舎では、来庁者と職員・議員等の動線を、ただ分ければよいわけではなく、利用しやすさを考えながら、執務部門や議会部門のセキュリティの検討も必要があります。
私は、動線が交わる位置にセキュリティゲートを設け、来庁者が利用する範囲と、職員・議員等が利用する範囲を整理することにしました。
課題文にある「夜間、土日祝日におけるセキュリティへの配慮」を考えた結果そこに必要だと考えました。
それが、記述の内容になりました。
設備・防災・構造も、記述のために後から考えない
記述では、平面計画だけでなく、設備や構造についても問われます。
ここも、解答例の言葉を覚えるだけでは対応しにくい部分です。
太陽光発電を選んだ理由
省エネルギー及び二酸化炭素排出量削減に際し、採用した設備システム(LED照明等、機器単体は除く。)と、採用した理由

記述で書きやすい「LED照明」や「節水型水栓」、といったことを書きたかったのですが、
見事に試験元から対策されておりました。
その結果、資格学校でも屋上に太陽光発電パネルを乗せることを指導されていたこともあって、それを記述に書きました。
正直、ここは資格学校で学んだ知識に助けられました。
太陽光エネルギーを活用し、建物で使用する電力の一部をまかなうことで、二酸化炭素排出量の削減につなげる。

記述の回答には、このように記載したと思います。
災害時に、何を動かし続けるのか
大地震等の自然災害が発生した際、発電機の給電対象とする設備機器と配慮した点

発電機の給電対象ということは、停電時でもあえて活かす設備機器は何か・・・
この問いを見たとき、何を書けば良いのか理解するまでに少し時間を要しました。
考えた結果、災害時は情報伝達が特に重要になると考え、非常用発電機の給電対象として、通信設備やサーバー室を考えました
都道府県や国との情報伝達を円滑に行うため、という考えで記述を書きました。

- どの設備をなぜ動かし続けるのか。
- なぜそれが必要なのか。
そういうことを聞かれているのだろうと思い、考え抜いた答えです。
免震構造と、無柱の議場

2025年の課題文には、次のようにありました。
大地震等の自然災害が発生した際に、建築物の機能が維持できる構造とする。(耐震構造、免震構造、制振構造等から選択し、適切に計画する。)
2025年 一級建築士設計製図試験 本試験より
「建築物の機能が維持できる構造」
2024年の本試験課題でも免震構造について勉強していたので、免震構造を採用しました。
また、議場は無柱空間とし、PC梁(プレストレストコンクリート梁)を採用しました。
PC梁の断面は、おおよそ500mm×1,100mm。
その梁を受ける柱は一般部分より大きくし、必要な配筋量を確保することを考えました。
床スラブについても、大人数の利用を想定して計画しました。
必要なスパン、階高、用途、荷重条件が変われば、考え方も変わります。
無柱空間が求められているなら、どのように柱を飛ばすのか。
大人数が集まる空間なら、梁・柱・床をどのように考えるのか。
構造計画まで、建築の計画として考えることでした。

次の課題から、記述の材料を拾う方法

ここまで読んで、「エスキスがまとまらない自分には、そこまで考える余裕がない」と感じる方もいるかもしれません。
私もそう思っていました。
だから、最初から完璧な記述を考える必要はありません。
次の課題では、まずこの3つだけを意識してみてください。
- 課題文から、地域・利用者・防災・環境など設計条件に関するキーワードを拾う
- エスキス中に、その条件をどの計画で解決するか決める
- 記述を書く前に、計画・理由・効果を確認する
例えば、住民交流スペースを公園側に配置したなら、
- 計画:公園側に住民交流スペースを配置した
- 理由:公園と一体的に利用できるようにするため
- 効果:地域住民や公園利用者が立ち寄りやすい施設となる
と整理できます。
書き始める前に、エスキスを見ながらこの3つを確認するだけでも、「何を書けばいいか分からない」という状態は減らせます。

私が4色マーキングで、ピンク色を「記述に使える重要なポイント」としていたのは、このためです。
ただし、印を付けるだけでは十分ではありません。
その条件を、平面・断面・設備・構造のどこで反映するのかまで決める必要があります。
4色マーキングで、課題文のどこに注目していたのかは、こちらの記事で詳しく解説しています。

解答例は、文章ではなく考え方を読む
この記事は、「記述を勉強しなくてよい」という話ではありません。
設備や構造の基本的な知識がなければ、太陽光発電や非常用発電機、免震構造、PC梁を選ぶことはできません。
記述の解答例も、学ぶ価値があります。
ただ、文章をそのまま覚えようとすると、本試験で自分の計画とずれた瞬間に使えなくなります。
解答例を見るときは、文章を覚えるのではなく、次のことを見てみてください。
- なぜ、この位置にその室を配置したのか
- 誰の動線を、どのように整理しているのか
- 課題文のどの条件を、どの計画に反映しているのか
- 設備や構造の選択が、何につながっているのか
解答例は、答えを覚えるためのものではありません。
そこに至った考え方を見るためのものだと思います。
まとめ|記述のために、別の答えをつくらない
私は以前、記述を図面とは別の問題だと考えていました。
だから、覚えるのを面倒に感じました。
エスキスと作図さえできればいいと思っていました。
でも、それは記述を疎かにしていたというより、自分が考えた建築を最後まで説明し切れていなかったのだと思います。
エスキスで決めたことには、本来すべて理由があります。
- なぜその部屋をそこに置いたのか。
- なぜその動線にしたのか。
- なぜその設備や構造を選んだのか。
記述は、その理由を自分の言葉で確かめる時間です。
何を書けばよいか分からなくなったときは、難しい表現を探す前に、エスキスを見返してみてください。
そこに描いた計画には、必ず理由があるはずです。
ただ、本試験では記述だけに時間をかけることはできません。
エスキス・記述・作図・見直しを含めて、6時間30分をどう使うかについてはこちらの記事でまとめています。

実際に私が2025年本試験でどのように計画し、記述に繋げたのかは、復元図とともにこちらの記事で振り返っています。




