一級建築士設計製図試験で二度の角番落ち|2年間のブランクを経て8回目で合格するまで

今回は、一級建築士を諦めた私が、もう一度挑戦しようと思えた理由をお話しします。
私は一級建築士の製図試験に8回目で合格しました。
でも、その途中で一度受験を諦めています。
6回目の製図試験(2回目の角番)で不合格となった後、製図道具は押し入れにしまいました。
「もう二級建築士で十分。」
そう自分に言い聞かせて過ごした約2年間です。
でも今、一級建築士として仕事をしている私は、あのとき諦めなくて本当に良かったと思っています。
今回は、一度試験を諦めた私が、なぜもう一度挑戦しようと思えたのか、その理由をお話しします。
「設計製図試験に心が折れた。」
「設計製図試験、諦めようかな。」
そう思っている方のお役に立てれば幸いです。

2度の角番落ちと、もっとも悔しかった5回目の不合格
設計製図試験でつらかったのは、2017年と2020年の角番落ちです。
それまで積み重ねてきた設計製図試験への挑戦は一旦終わりとなり、もう一度挑戦するには、再び学科試験からやり直さなければなりませんでした。
「また学科試験から受け直しか。」
設計製図試験という大きな壁を乗り越えられなかったのに、もう一度学科試験という壁も乗り越えなければならない。
そんな角番落ちの辛さを2度も経験しました。
しかし、角番落ち以上に辛かったのは5回目の不合格のときでした。
その5回目の製図試験後の資格学校の講師との面談では、
「今回は期待して合格発表を待てますよ。」
と言われ、自分自身も手応えを感じていました。
だからこそ「今年こそは合格できる」と信じていました。
それでも結果は不合格。
今振り返ると、過去7回不合格になった中で、この時が一番心が折れました。
当時は「なぜ落ちたのか」が分かりませんでした。
しかし、合格した今振り返ると、ランクⅢだった頃には共通する考え方のクセがありました。詳しくはこちらで紹介しています。
「やっぱり自分にはセンスがない。」
「何度やっても受からない。」
「自分だけ試験元から受からないようになっているんじゃないか。」
そんなことまで本気で思っていました。
不合格を突きつけられたあの日、自分のことを「何をやってもダメな人間」だと思いました。

設計製図試験に落ちたという事実以上に
「自分には建築の才能がない」
と否定された気になります。
何年も挑戦して結果が出ないと、「試験に落ちた」のではなく、「自分が否定された」と感じてしまいました。
なぜか記憶がないほど心が折れていた、6回目の受験
今振り返っても2度目の角番落ちの記憶だけが曖昧です。
試験直後はどんな気持ちで家に帰ったのか。
合格発表の日、不合格と分かった日にどんな気持ちだったのか。
間違いなくその時は悲しかったはずなのに、なぜかそこの記憶がありません。
すぐに「受験をやめよう」と決めたのか、それとも時間をかけて諦めていったのか。
その過程すら思い出せません。

ただ一つだけ覚えているのは、「一級建築士は諦めよう」と決めたことでした。
それほど心が折れていたのだと思います。
「二級建築士で十分」と、自分に言い聞かせました
6回目の不合格のあと、私は一級建築士になることを諦め、製図道具は押し入れにしまいました。
捨てようとも思いましたが、なぜ押入れにしまったのかは、今でもよく覚えていません。
「また受験するかもしれない」とは全く考えておらず、おそらく「しまうスペースがあったから。」その程度の理由だったのだと思います。
当時は「住宅なら二級建築士で十分。」そう何度も自分に言い聞かせていました。
でもそれは本心ではなく、本当は一級建築士になりたいけど自分は向いていないと思っていたからです。

一級建築士になれない自分に、理由をつけて納得させようとしていただけでした。
一級建築士への憧れ
私がもう一度受験しようと思ったきっかけは、いくつかありました。
営業・設計をする立場でお客様と話す機会が増えたことも、その一つです。
「他社の一級建築士の方が…」
「YouTubeで一級建築士が…」
そんな言葉を聞くたびに、胸がざわつきます。
その言葉を聞くたびに私は劣等感を抱いていました。
「どうせ自分は二級建築士だから」
もちろんお客様に悪気はありません。
現場管理をしていた頃なら、そのまま受験を諦めていたかもしれません。
しかし営業・設計という立場になり、お客様が資格を一つの安心材料として見ていることを実感しました。
忘れられない名刺交換
今でも忘れられない出来事があります。
ある日、お客様との打ち合わせの中で、キッチンメーカーのアドバイザーの方と名刺交換をしました。
その名刺には「一級建築士」と書かれていました。
その瞬間、劣等感がこみ上げました。
私も住宅を設計する仕事をしています。
お客様と何度も打ち合わせを重ね、間取りを考え、家づくりを提案しているのも自分です。
それなのに、自分は一級建築士じゃない。
・・・その方が一級建築士であることは素晴らしいことです。
努力して取得された資格です。
それでも当時の私は、
「商品のアドバイスをする立場の方も一級建築士なのに、住宅設計を仕事にしている自分は持っていない。」
その悔しさをしばらく引きずっていました。
本当は、諦めきれていなかった
その出来事がきっかけで、改めて自分の気持ちと向き合い分かったことは、
「自分は、一級建築士を諦めたつもりだったけど、本当は諦めきれていなかった。」
「二級建築士で十分。」と言い聞かせていたのは本心ではなく、やはり一級建築士になりたかった。
だから一級建築士という言葉に過剰に反応してしまっていたのだと思います。
明確に「今日から再挑戦しよう」と決めた日があったわけではありません。
少しずつ気持ちが戻り、「もう一度挑戦してみよう。」そう自然と思えるようになっていました。
「また落ちたらどうしよう。」
「また同じ思いをするんじゃないか。」
そんな不安はあります。
また不合格なら、1年という時間と、数十万円というお金を失うことになります。
それでも、一度逃げたまま終わる方が、きっと後悔すると感じていました。
もう一度挑戦したからこそ、考え方も大きく変わりました。
再起して初めての学科試験は不合格
改めて独学で3度目の合格を目指して学科試験に挑戦、法令集の線引きからのスタートでした。
ここまでのストーリ展開的に「2度の挫折から見事逆転ストレート合格!」と言いたいところですが、再挑戦は決して順調ではなく、挫折復帰後の最初の学科試験は不合格。
翌年ようやく学科試験に合格し、設計製図試験へ戻ることができました。
学科に合格しても、製図試験は以前と同じ考え方ではまたランクⅢでした。
そこから何を変えたのかは、こちらの記事で詳しく紹介しています。
「やっとスタートラインに戻ってきた。」
しかし設計製図試験の結果は、またもや「ランクⅢ」。
それでも不思議と以前のような絶望はありませんでした。
「また来年受ければいい。」
そう思えました。
以前では考えられないほど冷静でした。
「受かるまで受け続けるんだ。」
その覚悟だけは決まっていました。
そして翌年、8回目の設計製図試験で、ようやく合格することができました。
合格しても、最初は信じられませんでした

「おめでとうございます。」
資格学校から連絡が届いたとき、最初に思ったのは嬉しさではありませんでした。
「本当に?」
という気持ちでした。
落ち続けてきた期間が長すぎて、自分が合格したことを信じられなかったのです。
時間が経ってもまだ信じられない気持ちを持ちつつ、妻へ報告し、その後、お世話になった方々へ連絡しました。
「やっと終わった。」
こうしてようやく安堵することができました。
今、一度諦めようとしているあなたへ
私は8回目で合格しました。
「努力すれば必ず受かります」と簡単には言えません。
私自身、一度受験を辞めています。
自分には向いていないと思いました。
試験に落ちすぎて、何をやってもダメな人間だと思ったこともあります。
それでも今、一級建築士として仕事をしています。
もし今あなたが何度も不合格になり、「もう無理かもしれない」と思っているなら、一度だけ自分に問いかけてみてください。
「本当に諦めたいのか」
それとも、
「諦めなければならないと思い込んでいるだけなのか」
私は後者でした。
ずっと一級建築士への憧れがある中で過ごす日々の方が辛く、再度挑戦することを決めました。
あの時、押し入れの奥にしまった製図道具を捨てなくて本当に良かったと思っています。
そして、もう一度挑戦する勇気を出して本当に良かったと、心から思っています。
合格した後、自分がどう変わったのかはこちらの記事で紹介しています。

設計製図試験の多年度生でしたら、独学や通信講座も選択肢になると思います。




